アルツハイマー病に関するミニ知識

コラム

Q1 アルツハイマー病はどんな病気ですか?
アルツハイマー病は高齢者に発症する認知症(昔は痴呆症と呼ばれていた病気で、記憶障害を主症状とする病気です。)を引き起こす最も一般的な病気です。
Q2 アルツハイマー病はどうして起きるのですか?
アルツハイマー病ではアミロイド(β)と呼ばれるタンパク質が脳にたまり、老人斑という構造が脳内に出現します。アミロイドは脳が活動するときに排出されるゴミです。アミロイドがたまり始めた初期状態では、患者さんはまだ認知症を発症しておらず、前臨床性アルツハイマー病(未病)の患者さんと呼ばれます。
Q3 アルツハイマー病ではどうして記憶障害が引き起こされるのですか?
脳は記憶をシナプスというところにためておくことにより、記憶を維持しています。ドレブリンと呼ばれるタンパク質は記憶をシナプスに維持されるために必要な骨組みです。ドレブリンは健康な人でも老化とともに減少しますが、アミロイドβがたまるとドレブリンの減少がさらに亢進し、アルツハイマー病の患者さんではドレブリンがなくなってしまうため、シナプスの働きがにぶり、記憶障害が起こります。
Q4 アルツハイマー病が進むと認知症が発症するのはどうしてですか?
アミロイドの蓄積によりドレブリンの消失が起きてシナプスの働きが悪くなると、神経変性が起こり、神経原線維変化(タウタンパク質が蓄積する)が起こり、神経細胞が死んでしまいます。その結果、認知症が発症します。神経細胞は死んでしまうと再生しないので、病状が不可逆的になります。しかし、ドレブリンの消失は可逆的であると考えられているため、ドレブリンを増やすことができれば、神経細胞死の進行を防ぐことができると期待されます。
Q5 アルツハイマー病の薬はどんなものがありますか?
認知症の症状を一時的に直す対症療法的薬物はありますが、アルツハイマー病の発症を予防する薬物や、認知症の進行を防ぐ薬物はまだありません。
アルツハイマー病は、脳内にアミロイドがたまることにより起こる病気です。したがって、前臨床性アルツハイマー病患者に投与することにより、脳内アミロイドが蓄積しないようにする薬物(アミロイドを脳内から排除するための特異的モノクローナル抗体や、アミロイドを作る酵素を阻害する薬物)の開発が多くの製薬会社により試みられてきましたが、残念ながらまだ成功していません。
私たちは、アミロイドによるドレブリンの消失を防ぐ薬物により、認知症の進行を防ぐ治療法の開発を目指しています。既に動物実験では、食事療法や遺伝子発現制御によりドレブリンを増やすことにより、記憶障害の改善効果があることが示されており、私たちが目指す新たなアルツハイマー病の治療法は非常に有望な方法だと考えられます。