AlzMed

EN

INTERVIEW

CEOインタビュー
研究者インタビュー

アルメッド株式会社
CEO 白尾 智明

聞き手:市川玲子氏
東京生まれ。
総合健康情報誌『健康と良い友だち』編集長。

白尾先生は、ドレブリン研究を長年にわたって続けてこられたそうですね。

私たちがドレブリンを発見したのは1985年、かれこれ40年近くドレブリン研究一筋できました。
ドレブリンは、脳の発達過程で出現するアクチン結合タンパク質で、その後の研究から脳内シナプスにおける働き、がんの転移、ウイルス感染に関与することが判明しました。
それまで日本では、ドレブリンに関しては私たちの研究が唯一でしたが、定年退職する前の数年間、世界ではドレブリンの研究が盛んに行われ、様々なデータが出てきていました。それらを見聞するたびにドレブリン研究の価値を再認識し、同時にここまで積み上げてきた研究成果をなんとか形にして社会貢献しなければいけない、という使命感がますます湧き、ベンチャーとして起業しました。

唯一の研究だからこそ、新しい切り口による独創的な研究につながるのではないかと思いますが、現在、白尾先生が最も注力されているドレブリンの作用はどのようなものなのでしょうか。

脳機能は、神経細胞同士の情報伝達によって成り立ち、接合部であるシナプスは細胞間をつなぐ重要な役割を果たしていますが、アルツハイマー病の場合、シナプスの機能不全が起きていると考えられ、このシナプスの機能不全に大きく関与するのがドレブリンです。
簡単に言いますと、脳内に出現するドレブリンが広範囲にわたって消失すると、シナプスの機能不全が生じ、その結果、認知機能の低下が起こると考えています。
ドレブリンとシナプスの機能不全との関係を明らかにし、認知症の診断や治療薬の開発につなげたいと思っています。

現在、脳内にアミロイドβタンパクが過剰に発生し、その毒性で脳神経細胞やシナプスが傷つくことによって脳が委縮し認知症になる、という「アミロイド仮設」が主流です。
ドレブリンは認知症に対して、どのように関与するのですか。

これまでアミロイドβが増えると認知症になる、というところまではわかっていましたが、アミロイドβ自体がどう作用するのかは明確にわかっていませんでした。
そこでアミロイドβとドレブリンの関係について研究した結果、アミロイドβが増えると、ドレブリンが減少することを突き止めました。
実際、アルツハイマー病による死後の脳の海馬では、広範囲にわたってドレブリンが消失していることが確認されていますし、軽度アルツハイマー病患者や軽度認知障害患者の死後の脳の海馬でもドレブリンが減少していることが分かっています。
つまり、認知症の予防や改善における主要ターゲットは、アミロイドβの蓄積量ではなく、ドレブリンの減少量なのです。

ということは、ドレブリンがどのくらい減少したかを調べることで、認知症がどの程度進んでいるかがわかるということになりますか。

そのとおりです。実用化はまだまだ先ですが、例えば血液検査でドレブリン量を測定できれば、認知症の進行程度を的確に把握できます。
アミロイドβは、いわゆる脳内のゴミのようなもので、加齢とともに増え取り除くことはできません。
重要なのはドレブリンが減少した分を補充することであり、補充することによって認知症の発症や進行を抑えることができるのではないかと考えています。